夕陽がゆらゆらと揺らめいて地平線の彼方へと沈んでいくように、僕の命もやがて消えてなくなるのかもしれない――そう思うとひどく寂しい気持ちになった。きっともう長くない、それは分かっているのになぜか生に囚われてしまうのは、そんな寂しさも何もかも吹き飛ばしてしまうくらい明るいあの人がいるからだと最近気づいた。


「おーい、総司。入るぜ?」


ふいに襖の向こうから声がかかり身体を起こすと、もうその瞬間には壊れるのではないかというくらい勢いよく襖は開かれていて。相変わらず乱暴だなぁ、と小さく溜め息を吐き、どかりと布団の横に腰をおろしたその人を見遣った。


「…新八さんたら僕が返事する前にいつも開けるのやめてよね」
「あはは、そいつぁ悪ぃな。癖でよ。…で、調子はどうだ?」


じとりと睨みつけているのにも関わらずけたけたと豪快に笑うその姿から謝る気が全くないのがよく分かる。まぁ、新八さんにそんなこと期待してないけど。


「……調子、ですか。…最近はいいですよ、だいぶ」
「そうか、そりゃよかった」


ぎこちない答えにもそう言って安心したように笑う新八さんは、やっぱり"年上の男"だ。迂闊な3人の癖に、ほんとずるいよね。


「…新八さん、」
「ん?なんだ?」
「……」
「…?何もねぇのかよ」


呼び掛けたきり何も言葉を発しない僕に新八さんが訝しげな表情をする。
何も言うことがないわけじゃない。時機を伺っているだけだ。
僕の意図することが分からずますます首を傾げる新八さんにしてやったりな顔をして言ってやった。


「…馬鹿でしょ」
「ばっ、…はぁ!?」


突然の悪口に予想通り思いっ切り顔をしかめた新八さんを見て思わず頬が緩む。だって、大人な面ばかり見せられたら、そりゃあむかつくでしょう?


「馬鹿って…突然言うことねぇだろ!」
「本音を言うのに突然も何もないじゃないですか」
「………お前なぁ…!」


しれっと言う僕にもう何も言い返せなくなったのか新八さんはぴくぴくと口端をひくつかせると盛大に溜め息を吐き、そして自然な動作で僕の頭に手を置いて激しく撫でてきた。もはや撫でるより掻き回すに近いかもしれない。


「ちょっ、何なんですか急に…!」
「お前が何考えてんのかなんて俺にはちっとも分からねぇ」
「…は?」
「だから、言えんのはこれだけだ。…あんまり悲観的になんなよ」
「…」
「おし、じゃあ俺はそろそろ行くぜ?巡察終わったら団子買ってくっから、楽しみにしてろよ!」


そう言って新八さんはこの部屋に来たときみたいに豪快に笑うと、すっくと立ち上がって部屋を出ていった。ぱたん、と襖の閉まる音がすると一気に静けさが増す。まるで烈風のようだ、とふと思った。


「団子って…子どもじゃないんだから…」


そんなもので機嫌なんか直らないですよ。
そう思うのに、新八さんがどんな団子をお土産に持ち帰ってくれるのかと考えると、それが少し楽しみになってくる自分がいた。








あかねいろ


mixiの方の日記であげてた沖永…
きっかけはそういう名前の歯医者さんを見つけたことです←
まさかの組み合わせで申し訳ないww これを機にマイナーに目覚めてください
110722 春日時雨