永遠唄-とわうた- 第四話
04.
「うそ…」
ふと気がつけば障子越しに陽の光が射していて、ぴーちくと鳥の鳴き声もどこかから聞こえる。…結局、一睡もできなかった。いつでもどこでも、たとえ短時間でも爆睡できるのが自慢だったのに。
でも、あんなことがあったんだから寝られなくてもおかしくはない。実際に起こったのだから信じるしかないとは分かっているけど、そんな簡単には信じられないのだから。このわけの分からない場所で一晩過ごした後でも、やっぱりこれは夢なんじゃないかと思ってしまう。
「起きているか」
突然部屋の外から声がかかり、びくりと身体が跳ねた。驚きが声に出ないように抑えて襖の向こうの人物に答える。
「起きてますよ、一応」
「そうか。話がある。ついて来い」
「…分かりました」
何だか上から過ぎる物言いだなと少しむっとしたけれど、ここは彼らの領域であってわたしは部外者のただの怪しい人間でしかないのだ。だから仕方ないことだ、と大人しく指示に従う。
現代では考えられないような薄い布団を畳み着物の皺を申し訳程度整え、ギターケースを抱えてゆっくりと襖を開ける。顔を上げるとそこにはあたしが最初に会った新選組の人がいた。もちろん、声でだいたい予想はついてたけど。
その人はあたしの顔をちらりと見ると僅かに眉をひそめ、だけれど何も言わずに背を向け廊下を歩き始めた。相変わらず綺麗な髪がふわりと揺れる。
今のはいったい何に対しての反応だったのか。一日徹夜したくらいじゃ隈なんてできないから、寝てないのがバレたわけではないはずだ。なら何だったんだろう。ギターケースという怪しい物体に対しての警戒?
「広間には幹部が集まっている。あまり変な真似はしない方がいい」
「…はぁ…」
こちらをちらりとも見ずに言われた言葉。幹部ということはきっと上の地位にいる人。あたしが思っている以上にあたしは怪しまれているみたいだ。
変な真似といったって何をするんだか。刀を持っている人相手に何かおかしな行動をする勇気なんてあたしにはない。こんな場所で捨てる命なんてないんだから。
そういえば、昨晩ここに連れて来られたときに何だか引っかかることがあった気がする。暗がりでよく見えなかった上に小声での会話だったからよくは分からなかったけど、あたしの前を歩いていた左之という人と前からやってきた誰か(恐らく今目の前を歩いているこの人)が何か二言三言話していたのは分かった。そして二人は恐らく永倉新八であろう人にあたしを任せどこかに消えてしまったのだ。今思えばあの時からあたしは様々な疑いをかけられていたのかもしれない。変なものを持っているだけでなく、まだ陽の高いうちから真夜中までずっと同じ場所に座っていたというのが分かったのだから。
思わず溜め息を吐きそうになったとき、目の前の人物が歩を止めた。それに従ってあたしも立ち止まる。
「ここが広間だ。入るぞ」
くるりと振り向き無表情でそう言ったかと思うと、あたしに心の準備をする間も与えずに戸を開けた。
ああ、もう逃げられない。
(猜疑の応酬)
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うわぁああん、ケータイサイトは更新してたのにこっち更新するの忘れてたよおおおお/(^o^)\
そしてめちゃくちゃ短いなおいwww
この後の展開が早く書きたいのでがんばります。
110716 春日時雨