「ね、ねぇ…スガタくん?タクトくんがすごいこっち見てるよ…?」


ワコにそう声を掛けられ、「ほら…」と示された方を見てみれば、言われた通りむすくれた顔でこっちを見ているタクトの姿があって。一瞬目が合ったかと思えばすぐにふい、と視線を逸らされた。その反応が面白くてくすりと笑みがこぼれる。


「いいんだよ、ワコ。気にしたら負けだ」
「ま、負け…?」
「タクトは俺に構ってほしいだけだから」
「(お れ に … !)そっか、そうだよね!」


俺の言葉に顔を赤くしたワコは若干興奮気味に頷いた。何を想像してるのか分からないこともない。大方、俺とタクトの関係を想像してるんだろう。相変わらずのワコの癖だ。
ふと視線を感じてそっちを向くと、あからさまに慌てた様子のタクトが教科書に顔を埋めていた。嗜虐心がくすぐられ、少し意地悪でもしてみようかと企んだところで授業開始のチャイムが鳴った。…仕方ない。からかうのはあとでだ。




「スガタ!」


授業が終わってすぐ、俺が話し掛けに行く前にタクトの方から来た。多分そろそろ限界だろうなと思ってたさ、もちろん。
だけどそう簡単にはタクトの望みは叶えてなんかやらない。


「なんだい、タクト」


できるだけ何てことないように言葉を返すと、既に潤みつつあったタクトの瞳にさらに涙の膜が張った。俺の机の上の握りこぶしに力が入りすぎてふるふると震えている。
それに少し満足感を覚えた。


「〜〜〜っ、とにかく来て!」


いい加減我慢がならなくなったのか、俺の腕を引っ張りどこかへ連れていこうとするタクト。その様子があまりにも必死で思わずにやけそうになったけど、そんなことがバレたら泣き出してしまいそうだったから。


「で、タクト。俺をどこに連れてく気なんだ?」
「だ、誰にも邪魔されない場所…!」
「へぇ、邪魔…ね」


その発言はつまり、今に至るまでは邪魔されてたということ。…ワコ相手に嫉妬でもしたか。
堪えきれず小さく笑い声が漏れた瞬間タクトの足が止まり、それに従って俺の足も自然と止まる。


「邪魔されない場所っていうのはここでいいのか?」
「ちが、」
「確かに人気はないけど…」


周りを見渡しながら言う意地の悪い俺の行動にタクトの顔が歪んだ。眉間には深いしわが刻まれている。そして、俺から視線を外して床を見たかと思うと突然声を荒げた。


「分かってんだろ!ふざけんなよ…っ」


その声は、少し震えていた。


「分かってるって、何を?」


くすりと笑って返せばタクトはますます不機嫌そうな顔をして。そこまでは容易に想像できた。けど、次に予想外の行動に出た。


「俺だって…」
「ん?」


ぼそり、と声が聞こえた気がして聞き返すと突然肩を掴まれ、勢い余って壁にぶつかりその鈍い痛みに顔をしかめると、目の前にはタクトの顔のどアップ。そして、後ろには壁。珍しくタクトが強気だ。


「おい、タク…」
「うるさい」


咎めようとした俺の言葉は最後まで言い切ることなく遮られた。言うまでもなく、タクトの唇で。
ただ押し付けるだけの幼稚なそれだったのに、タクトは満足そうに笑う。


「たまには僕からするのもアリでしょ?」
「…俺は気に入らないけどな」
「なっ…、だってスガタが僕をほっとくからいけないんだろ!」
「…それがわざとだって言ったら?」
「え…?どうい、うわ…っ」


にっこりと笑って言うと、分かりやすくきょとんとした顔をして。疑問が言葉として出てくる前に素早くタクトの手首を掴んで身体を反転させ、壁に押し付ける。


「痛って…」
「俺より上に立とうなんて、10年は早い」
「は!?…ん、む」


納得のいってなさそうな声を上げたタクトの唇を、素早く自分のそれで塞ぐ。さっきタクトがしてきたようなただ触れるだけのキスなんかじゃダメだ。固く閉じられた唇を割って舌をねじ込み、口内を余すことなく弄る。うっすらと目を開いてタクトを盗み見ると、ぎゅう、と思い切り目を瞑っていた。
そろそろ限界だろうかという頃合いで唇を離す。


「ふ、は…っ、」
「せめてこれぐらいできるようにならないとな」
「な、なな…!」
「あんなキスじゃお子様って言われても文句言えないだろ」
「お、おお…お子様じゃない!」


まだ肩で息をしながら顔を真っ赤にして主張するタクトは完全にお子様だ。本当にからかい甲斐がある。


「そろそろワコが探しに来る。戻るか」
「ちょ、まっ、スガタ!わざとってどういうこと!?」


含み笑いをしながらそのままタクトに背を向け教室へと歩き出すと、案の定むっとした顔をしたタクトが追い掛けて来た。
その問いに曖昧に首を傾げてみせる。


「さあ?」
「さあって…何だよそれ!」
「じゃあ聞くけど、俺のこともっと好きになった?」
「え!?そ、そりゃあ、まあ…」
「なら成功だ」


振り向いてにっこりと笑うと見る見るうちにタクトの顔は真っ赤に染まって。口をパクパクさせながらやっと聞こえるくらいの声量でこぼれた言葉に、今すぐこの場で押し倒したくなった。


「何だよそれ…ずるい…」









(スガタくんとタクトくんってやっぱり…!)


これも友人に書いてーって言われてmixiの日記にあげたスガタク
自分の予想以上にラブラブしまくった←
てかね、やっぱスガタくんはド鬼畜wwww
タイトルをタクトからスガタくんでグラデーションにしたら意図せずして途中にヘッドが…(笑)
110722 春日時雨