Q.2月14日といえば?
A.バレンタインデー。

2月14日=バレンタインデー
という等式は、今生きているほどんどの人の頭の中で成り立つと思う。多分幼稚園生以上のある程度知識を持った人なら。
だけど俺は違う。2月14日で思い浮かべることは、世間一般とは・・・違う。
誕生日がバレンタインデーだなんてこれほど悲惨なことはない。
毎年毎年プレゼントはチョコレート。それもテニス部のファンの人たちから、山ほど。
時々誕生日プレゼントとバレンタインチョコとを別にくれる人がいる。それはすごく嬉しい。でもほとんどの人の場合は誕生日とバレンタインとで1つのチョコだ。正直言って一緒にされるとついでっていう感じでなんだか愛を感じないというか、なんとなく面倒だから一緒でいいやっていう適当さを感じるというか・・・。とにかく嬉しいけどあまり素直に喜べない。
もちろん友達は誕生日プレゼントをくれる。仲良しだからこそ、物ではなく言葉をくれたり、簡単だけれどジュースを奢ってくれたりと少し優しくなる。だから実はそれの方が高価なものを貰うより何倍も嬉しかったり、楽しみだったりする。女子には申し訳ないんだけれど。
さすがに男子からチョコはちょっと、いただけない・・・かな。あ、いや、貰ってもいいけど。




2月13日、誕生日前日。そしてバレンタインデー前日。
女子は心なしか浮き足立っているように見える。そして男子も。きっと、いや確実に、バレンタインデーが原因で。
俺の誕生日を気にしている人はいないんじゃないかなと思うと少し寂しい。
それでも学校生活はいつもどおりだ。部活もある。ただいつもと違うのは、部活までの間に数人の女子から誕生日プレゼントという名のバレンタインチョコを早めに貰ったことだけだった。
やっぱり、何だかんだ言っても祝ってもらえるのは嬉しい。だけど、好きな人から貰えないんじゃ嬉しさも半減する。好きな人から誕生日プレゼントがほしい、だなんてそんな願いは叶わないのは分かってるけど。


「宍戸さーん!!」

テニスコートに大好きな先輩の姿を見つけた俺は、大声で名前を呼び手を振った。すると気づいてくれたらしく、片手を挙げて軽く挨拶してくれた。
それが嬉しくて、走ってコートの入り口まで近づくと宍戸さんも来ているのが見えた。その宍戸さんの優しさに自然と顔が綻んだ。やばい、怪しいかもしれない俺。
コート入り口まであと2m弱というところで減速して勢いを殺す。大好きな宍戸さんに勢いあまって突っ込んで、押し倒してあわよくば、なんて一瞬でも考えていたと宍戸さんにばれたら拳骨をくらいそうだ。
目の前まで行ってもう一度「宍戸さん」と意味もなく呼ぼうとしていくつかの音を発した直後、それは胸への突然の衝撃で遮られた。

「遅ぇよ長太郎」
「す、すいません。放課後にも女の子から呼び出されちゃって・・・。にしたって、そんな勢いよく裏拳しなくたっていいじゃないですかぁ、痛いですよ・・・」
「ははっ、悪ぃな。つーかお前の鍛え方が甘いんだろ。んな女々しい声出すなっつの」

宍戸さんが腕を組み、壁というか塀というか・・・にもたれかかりながら笑う。その笑顔が見れるならどれだけ女々しくたって、どれだけ格好悪くたって構わないといつも俺は思う。そう言ったら多分でかい図体して何言ってんだ、って笑うのだろう。
でもその言葉で笑わせることは、きっと一生ない。

「ほら早く部室行って着がえてこいよ。跡部には言っといてやるから」

その言葉に「ありがとうございます」と言おうとしたが、宍戸さんがもう一度口を開く方が早かった。そして、その口から出た言葉に驚いて、感謝の言葉は軽く空に飛んでった。キランって効果音が聞こえるくらいに。

「長太郎は女子と逢引していて遅れました、ってな」
「ちょっ、逢引って、宍戸さん! 誤解を招くようなことは言わないでくださいよ! 俺は別にそんなっ」
「分かった、分かったから落ち着けっての。これアップにする気か?」

けたけたと腹を抱えて笑い始める宍戸さんに少しムキになって返すと、突然笑ったまま俺の両肩をつかみ体を回れ右させると背中を軽く押し、また言葉を紡いだ。

「練習時間なくなっから早く行ってこいよ。アップは付き合ってやるから」
「・・・はい!」

やっぱり宍戸さんは優しい。押された背中に残っている宍戸さんの温もりを感じながら部室へと走った。
頬の筋肉が緩みに緩みきっているのが自分でもよく分かった。口元を緩ませながら走っているなんて怪しさ極まりないけど、引き締められないのだから仕方ない。そんなことは気にせずに早く宍戸さんのところへ戻ろうと思い、ロッカーに頭や腕をぶつけつつ即行で着がえた。多分1分くらいだったと思う。
ラケットを乱暴に掴み、先ほどと同じように全力疾走で戻ると、さっき話したときと変わらない位置にいる宍戸さんの横に、日吉がいた。何話してるんだろう、俺の宍戸さんに。

「宍戸さん! ・・・と、日吉。着がえてきましたけど、どうしたんですか?」

あたかも只今日吉に気づきました、とでも言うかのように日吉、と付け足すと、日吉があからさまに溜息をついた。

「用はそれだけなんで俺は練習に戻ります。部長には伝えておきますから」
「あぁ、ありがとな日吉」

俺の質問は無視して自分のコートに戻る日吉に、宍戸さんが礼を言う。何なんだ、話の展開が読めない。
疑問に思い聞くと、答えてくれた。

「跡部が、お前らはそっちのコートで好きに練習やってろだと。で、お前の遅刻については日吉が言っといてくれるらしい」

聞いてみると案外普通だった答えに納得すると、今度は宍戸さんが聞いてきた。

「何だと思ったんだ?」
「いえ、なんでもないです」

軽く笑いながら聞き返す宍戸さんに笑って返す。日吉に嫉妬してました、なんて口が裂けても言えない。

「ならいいけどよ・・・。よし、始めっか。あともう何時間もねぇからな」
「はい!」

アップのラリーでも始めようといつものようにラケットで肩をとんとんと叩きながらコートの反対側に向かう宍戸さんの俺よりも小さいけれど頼もしい背中に向かって返事をしてから、大きく息を吸い込み叫んだ。




「宍戸さん! 大好きです!!」










早送りの誕生日を抱き締める
(たとえ数時間でも、たとえ前日でも、一緒にいられるのなら幸せです)


やっとです、ちょたハピバ文。待たせた上にこれBLかよって思っているそこのあなた。威張れないけどおいら頑張りました・・・orz
でも出来が残念ですほんと流氷の上でふんどし一丁で土下座したいくらいです。あ、上が見えますけども←
で、ちょたと宍戸さんなのですが、宍戸さんってどんな風に喋るんでしょう? というかこの2人ってどんな感じに喋ったっけ?
そしてわけ分からんが日吉が友情出演です。ノーギャラで。
なんだかどちらが有利な立場に立っているのかも分からないが、おいらはこんな感じのナチュラルに好きって言えちゃう感じが好きです。
2月を2時間ほど過ぎましたがそこは気にせず大目に見てください。
090228 春日時雨